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黒田三郎 詩集 現代詩文庫 思潮社

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黒田三郎 詩集 現代詩文庫 思潮社


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引用

声明

大事な眼鏡をいつのまにか
なくしてしまったのではないか

僕が僕につける愚かな言いがかりよ
ああ いまさら
燃えた町の崩れた壁や瓦を掘りおこしたとて何になろうか
燃えた町の葉のない並木のしたをうろついたとて
何になろうか
頭の中の抽斗をあけたりしめたりしてみても新しい不安を見つけ出すだけである
たとえまた眼鏡が僕の手に返って来たとしても
それは今までもよく僕に合うであろうか

以下略

あなたの美しさにふさわしく

失われたもののみが美しく
失われたもののみがあなたのものであったと
ひそかにあなたに告げるのは誰か
心に残されたものは
赤さびの鉄骨と燃え残った石壁だけであると
ひそかにあなたに告げるのは誰か
美しいひとよ
思い出があなたをどん欲にする
かつてあなたを容れるためにあり
いまもなおあなたを容れるためにある
空白のなかで
あなたの美しさにふさわしく
唇を洩れて出るひとことよ
たかがそれは
木と紙とガラスにすぎなかったのだと

以下略

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